タクシーの運行管理者とは

タクシードライバーが安全に業務を行うためには、運行管理者の存在が欠かせません。運行管理者は、ドライバーの健康状態や勤務時間を管理し、運行の安全性を確保する役割を担っています。さらに、事故やクレーム対応、車両の点検管理なども担当し、タクシー会社の運営を支える重要な職種です。

こちらでは、タクシーの運行管理者の仕事内容や資格取得の方法、仕事のメリットや大変な点、向いている人の特徴について詳しく解説します。

タクシーの運行管理者の仕事内容

運行管理者の業務は多岐にわたりますが、最も重要なのは、ドライバーが安全かつ快適に業務を行えるようサポートすることです。そのために、日々の健康管理や勤務スケジュールの調整、安全運転の指導、事故対応など、幅広い業務を担当します。

ドライバーの健康状態のチェック

タクシーの安全運行を確保するためには、ドライバーの健康管理が不可欠です。運行管理者は、出勤前と退勤後の点呼を通じて、ドライバーの体調を確認します。顔色や声の調子を見ながら、睡眠不足や体調不良の兆候がないかを慎重にチェックし、必要があれば乗務を見合わせる判断を下します。

また、アルコール検知器を使用して飲酒の有無を確認し、万が一、酒気帯びの状態であれば乗務を禁止するなど、厳格な管理を行います。

シフト管理と勤務時間の調整

タクシードライバーの労働時間は、法律によって細かく定められています。運行管理者は、ドライバーが長時間労働にならないよう、勤務スケジュールを作成し、適切な休憩時間を確保することが求められます。

たとえば、1回の勤務時間には上限があり、休憩を含めても一定時間を超えないように管理しなければなりません。また、連続勤務を防ぐために、次の乗務までに必要な休息時間が確保されているかも確認し、過労による事故を未然に防ぐことも重要です。

勤務時間の管理には、運転記録計（タコグラフ）などを活用し、走行距離や運行状況をリアルタイムで把握します。記録データをもとに、必要な調整を行いながら、安全な運行ができるように調整するのが運行管理者の役目です。

ドライバーへの教育・指導

タクシー業界では、安全運転や接客マナーの向上が重要視されており、運行管理者はドライバーの教育にも力を入れます。特に、新人ドライバーには、タクシー業務に必要な知識や技術を丁寧に指導し、安全に乗務できるようサポートします。

また、事故を起こしたドライバーには、再発防止のための指導を実施。運転中の注意点や危険回避の方法を改めて伝え、より安全な運行ができるようにします。高齢のドライバーには、体力や判断力の変化を踏まえた指導を行い、無理のない働き方を提案することもあります。

事故やトラブルが発生した際の対応

タクシー業務では、どれだけ気を付けていても事故やクレームが発生することがあります。タクシードライバーが業務中に事故を起こした場合、、運行管理者は迅速に状況を把握し、適切な対応を取る必要があります。

たとえば、事故が起こった場合は、まずドライバーから詳細を聞き取り、警察や保険会社への対応を行います。同時に、事故による影響が最小限に抑えられるよう、他のドライバーの配車を調整することも重要です。

乗客とのトラブルが発生した場合は、ドライバーと乗客の双方から話を聞き、公正な立場で解決策を考えます。時には会社として謝罪や補償が必要になることもあるため、適切な判断力と冷静な対応が求められます。

さらに、事故やトラブルが発生した後は、同じような問題を防ぐための対策を考えることも大切です。事故の原因を分析し、ドライバーに安全運転の指導を行うことで、再発防止につなげます。運行管理者は、ただ問題を処理するだけでなく、将来的なリスクを減らすための役割も担っているのです。

車両の管理とメンテナンス

タクシー車両は毎日稼働するため、定期的な点検やメンテナンスが欠かせません。運行管理者は、車両の状態を把握し、必要に応じて整備を手配します。

日常点検では、ドライバーが出発前にタイヤの空気圧やエンジンの異常がないかを確認し、問題があればすぐに対応します。また、定期点検や車検のスケジュールを管理し、安全性を維持することも大切です。

もし、車両に不具合が見つかった場合は、早急に修理を依頼し、事故につながるリスクを未然に防ぎます。車両の管理がしっかりできているかどうかは、会社の信頼にも直結するため、細やかなチェックが求められます。

運行管理の仕事に必要な資格

特別な資格を持っていなくても、タクシー会社で運行管理者として働くことは可能です。キャリアアップを考えるなら「運行管理者」の資格を取るのがおすすめです。

資格を取得するには、「運行管理者試験（旅客）」に合格する方法と、実務経験を積んで取得する方法の2つがあります。

運行管理者試験は年に2回（3月と8月）実施され、道路運送法や労働基準法、運行管理の実務などが出題されます。合格率は約30～40％とやや難易度が高めですが、しっかりと勉強すれば十分に合格を狙えるでしょう。

一方、5年以上の運行管理業務の実務経験を積み、必要な講習を受講することで、試験を受けずに資格を取得することも可能です。長年タクシー業界で働いている人にとっては、この方法も一つの選択肢となります。

タクシーの運行管理者になるメリット

運行管理者として働くことには、さまざまなメリットがあります。資格を取得することで、キャリアの選択肢が広がり、安定した働き方ができるのも魅力の一つです。

デスクワークが中心で体力的な負担が少ない

タクシードライバーの仕事は長時間の運転を伴いますが、運行管理者は基本的に内勤が中心です。デスクでの事務作業や管理業務がメインとなるため、体力的な負担が少なく、長く働きやすい職種といえます。

もちろん、点呼の際にドライバーと直接話したり、車両の状態をチェックしたりすることはありますが、外での業務は少なめです。天候に左右されることなく、比較的落ち着いた環境で働けるのもメリットの一つでしょう。

安定したキャリア形成が可能

運行管理者の配置は、法律で義務付けられているため、タクシー会社にとって不可欠な存在です。業界全体の動向に左右されにくい、安定した職種といえます。また、タクシードライバーと異なり、運転業務がないため、年齢を重ねても長く働くことができます。

また、経験を積むことで昇給や役職のステップアップも期待できます。管理職になると、給与や待遇面がさらに向上するため、長期的なキャリアを考えるうえでも魅力的な仕事です。

資格を取得すれば就職や転職に有利

運行管理者の資格は、タクシー業界だけでなく、バスやトラックなどの運送業界でも活用できます。この資格を持っていることで、業界内でのキャリアアップが期待できるだけでなく、転職の際にも有利になります。

特に、運送業界では法律上、一定台数以上の車両を持つ事業者に運行管理者の配置が義務付けられているため、資格取得者の需要は高い傾向にあります。これにより、他業界へ転職する際にも強みを持つことができます。

運行管理の仕事で大変なところ

運行管理者の仕事には、やりがいがある反面、大変な部分もあります。実際に働くうえで、どのような点が負担になりやすいのかを見ていきましょう。

勤務時間が不規則になりやすい

タクシー業界は24時間稼働しているため、運行管理者も日勤と夜勤のシフトがある場合が多いです。特に深夜や早朝の勤務が発生することもあり、生活リズムを整えるのが難しいと感じる人もいるかもしれません。

ただし、会社によっては固定シフト制を採用しているところもあり、規則的な勤務ができるケースもあります。働く会社によって勤務体系が異なるため、求人を探す際には勤務時間の条件をしっかり確認することが大切です。

責任が大きい

運行管理者の仕事は、ドライバーの安全を守る重要な役割を担っています。そのため、万が一事故が発生した場合は、運行管理の体制や指導に問題がなかったかを問われることもあります。

また、ドライバーの健康管理や勤務時間の調整が不十分だった場合、過労運転や労働基準法違反につながるリスクもあります。ドライバーだけでなく、会社全体の運営にも関わるため、プレッシャーを感じる場面があるかもしれません。

業務範囲が広い

タクシーの運行管理者はドライバーの健康状態のチェックや勤務時間管理だけでなく、事故やトラブルへの対応、配車の指示、車両のメンテナンス状況の確認、そして各種書類の作成や保管など、やるべきことがたくさんあります。電話対応に追われる一方で、ドライバーの面談や研修の企画を進めなければならない日もあり、一日のスケジュールが詰まりがちです。テキパキと優先順位をつけながらこなす力が必要になります。

また、仕事をこなすためには、運転に関する知識だけでなく、労働基準法や道路交通法、配車システムの使い方など、幅広い知識が必要になります。また、法律の改正や新しい運行管理システムの導入など、業界の変化にも対応し続けなくてはなりません。

対人関係のストレスがあることも

運行管理者は、ドライバーや上司、乗客など、多くの人と関わる仕事です。特にドライバーとの関係は重要で、時にはシフトの調整や業務の指導に対して不満を持たれることもあります。また、クレーム対応では、乗客の怒りを直接受け止めなければならない場面もあります。

そのため、コミュニケーション能力や冷静な対応力が求められます。適切な対応を心がけることで、ドライバーや乗客との信頼関係を築くこともできます。日々の業務を通じて、トラブルを未然に防ぐスキルを磨くことが大切です。

タクシーの運行管理者に向いている人

運行管理者は、責任が大きく、対応力が求められる仕事ですが、向いている人にとっては十分なやりがいを感じられる仕事でもあります。タクシーの運行管理者に向いている人の特徴を見ていきましょう。

責任感が強い人

タクシーの運行管理者は、ドライバーや乗客の命を守る仕事と言っても過言ではありません。健康状態の悪いドライバーがいれば休ませる、事故があれば再発防止策をしっかり講じるなど、常に最善策を考えて動く責任感が求められます。

冷静な判断ができる人

運行管理の仕事では、予想外のトラブルが起きることが少なくありません。理不尽な苦情、突然の車両故障、ドライバーの急病など、さまざまな出来事に直面したに、冷静に判断し、適切な対応を取れる人が重宝されます。普段から落ち着いて物事を整理し、誰かがミスしてしまっても感情的にならずに次へ生かす方法を考える姿勢があると、ドライバーからも信頼を集めやすいでしょう。

気配りができる人

ドライバーの体調や精神的な負担にも気を配れる人が、運行管理者として活躍しやすいです。点呼の際には、単にアルコール検査をするだけでなく、ドライバーの表情や態度にも注目し、少しでも異変を感じたら声をかけることが大切です。

また、シフト管理の際には、ドライバーの希望をできるだけ考慮しながら、会社全体のバランスを取ることも求められます。こうした気遣いができる人は、周囲から信頼される運行管理者になれるでしょう。

コミュニケーションが得意な人

運行管理者は、ドライバーや乗客、会社の上層部など、多くの人と関わる仕事です。ドライバーへの指導やシフト調整を円滑に進めるためには、適切なコミュニケーションが欠かせません。

また、クレーム対応や事故処理では、相手の話をしっかり聞き、誠実な対応を心がけることが重要です。人と関わることが好きで、トラブルを円満に解決するのが得意な人に向いている仕事といえるでしょう。

細かい作業が得意な人

運行管理者の仕事には、勤務スケジュールの作成や、運転記録の管理、配車業務など、正確さが求められる業務が多くあります。

細かい作業をコツコツと進めるのが得意な人や、計画的に業務を進めることが好きな人には向いている職種です。